逃れられない「地政学的リスク」との向き合い方

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企業にとってこれからの最大のリスクテーマは何でしょう? 不祥事や違法事案も悩ましいテーマではあるでしょうが、比較にならないほど深刻なテーマが「地政学的リスク」だと考えています。日本で地政学的リスクというと保険分野のテーマとして検索結果が表示されることが多いですが、企業の存立、ひいては国家の存立に繋がる、最悪の場合「戦争」という二文字を引き寄せる深刻なテーマです。

日本企業は長く、経済と政治は別というスタンスを構築し、どこか他人事のようなスタンスで向き合ってきたように感じます。それが許される環境にあったということもできるでしょうが、もはやその時間は過ぎました。真意は違うかもしれませんが、象徴的に感じたのが、ファーストリテイリング(ユニクロ)の4月8日の決算記者会見でした。記者に新疆ウイグル自治区での強制労働問題について問われた柳井正・会長兼社長は「政治的なことなのでノーコメント」と答えました。

実はファーストリテイリングは2020年5月、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウからの質問に対して「新疆ウイグル自治区で生産されている商品はない。関連づけられている企業は生産パートナーでも指定素材工場でもなく、取引はない」と事実関係については回答していました。なので全体評価的なところでは忖度が働いたのかもしれません。この「商売と政治は別」というスタンスはこれまで容認されてきたように思いますが、2011年に国連で「ビジネスと人権に関する指導原則」が承認されるなど企業を取り巻く環境は大きく変わり、とりわけ人権への配慮が重視され、企業の社会的責任として「人権デューデリジェンス(注意義務・努力)」の策定が要求されるようになりました。その流れは、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)とESG(環境・社会・企業統治)投資へと繋がってきました。これを受けて経営の目標としてSDGsを掲げ、ESG投資を意識する企業が増え、大手企業はほとんど足並みを揃えたように感じます。このSDGsの17の国際目標では差別や人権侵害を否定しています。企業がSDGsを経営の柱に据えた以上、人権侵害を否定しなければ自家撞着を来すと言えますし、少なくとも「政治問題でノーコメント」という逃げ方は選択できなくなってきたといえるでしょう。さらに言えば究極の2者択一が迫られる局面も出てくるでしょう。これからこうした悩ましい問題に多くの企業が直面します。企業は地政学的リスクにどう向き合っていくべきか-。重要な経営テーマとして考えていただきたいと思います。

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