新型コロナウイルスと現場の危機管理広報 〈1〉

先が見えない新型コロナウイルス(COVID-19)は、大災害などと同じく国家的なクライシスのカテゴリーに入りますが、企業や団体などにとっても他人事ではありません。国の初期対応がうまくいかなかったため国内での感染拡大が避けられそうになく、米国疾病対策センター(CDC)では来シーズンの流行も危惧しています。未知のウイルスの暴れ具合にもよりますが、企業などは従業員らの安全確保から感染者が出た場合の対応まで様々な局面で「危機管理」が求められ、その結果を外部に発信するか、しないか、発信するならどのような内容にするか、外部からの問い合わせにどう対応するかなどで「正解がない」判断を迫られます。

危機管理広報は、派手なPR広報とは違って冷や汗しか出てこない、どちらかと言えば割に合わない仕事と捉えられがちですが、企業イメージを左右し、ピンチをチャンスに変えることもできる重要な業務分野です。ただ、総論の知識だけで乗り切れるほど甘い仕事ではありません。

そこで危機管理広報の実務をシリーズとして考えてみたいと思います。この中で広く勧められているメソッドを否定することもありますが、これは事件・事故・災害・不祥事などを見てきた元記者としての見方です。異論があるかもしれませんが、その他人の意見に疑問を持つことこそが危機管理に携わるときには大切なのです。

危機に同じ事案はなく、それ故「解」は毎回新たに考えるしかありません。専門家の知識や経験値は一定の役には立ちますが、あくまで参考です。最終的には責任を負う当事者が自分で考えるしかないのです。少しでもその助けになればと考えながら、新型コロナウイルスの事例を基に実務的に説明していきたいと思います。

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